とことこ保育

人生で間違いなく大切な乳幼児期

【保育の振り返り】苦手な食べ物とアプローチ。

 

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 2歳~5歳児みんなで給食(お弁当)の時間。今日のメニューは、

 

・ジャムサンド

スナップエンドウのドレッシング和え

・トマト

・豆腐グラタン

・リンゴ

 

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普段はお弁当の蓋を開けると黙々と食べ始める5歳児 Cちゃん 2歳児 Dちゃんの姉妹だが、今日は揃って進みが遅い。様子を見る限り原因は角切りになって入っていたトマト

 

「どうしたの?」と声をかけてみると

「トマトが嫌.....。」

とお姉ちゃんのCちゃんから率直な応えが返ってきた。

 

「トマトの何が嫌?」

「味とぐじゅぐじゅ(とした食感)。」

 

 

「あぁーそっかぁ」と口にして答えながら、どう対応しようか考える。

 

汁気のある食感が苦手なら皮に近い部分を食べるのではないかと考え、提案するも

「いや」

他のメニューと一緒に食べることを提案すると、

「一緒じゃなくて、べつべつがいい」

他のメニューを先に食べてみることを提案して、ようやく妹のDちゃんがジャムパンに手を伸ばして食べ始めたが、どの方法もCちゃんとDちゃんの心には響いていない様子だった。

 

 

考えた末、決定権をトマトに与えてみることにした

「じゃあトマトに聞いてみよう。先生の口に来たい?それともC・Dちゃんの口?」

耳を近づけてトマトの言葉を聞き取ろうとジェスチャーする私を見てにやける2人。

「なんて言ってる?」

「トマト、Dちゃんのくちだってー!」と、Dちゃんが口にしたので、ここ!と思いトマトを近づけてみるが受け入れてもらえず。

 

次に魔法の力を使ってみた

「C・Dちゃんさ、Eくん魔法のパワーを持ってるの知ってた?」

と声をかけて、トマトが食べれない2人の一連の流れを隣のテーブルで見ていた5歳児 Eくんに助けを求めてみた。

「このスプーンの上にトマトがあるでしょ。先生が目を閉じて呪文を唱えている間にEくんこのトマトが消せるんだって。」

私の言葉を聞いて、状況を読み取ってくれた 5歳児 Eくん。

「できるよ!」

と言うと、魔法の使い方をデモンストレーションしてくれた。

ちちんぷいぷいの、ぷい!」と私が目をつぶって呪文をかけている間にEくんがスプーンの上のトマトを一口ぱくり。私が目を開けた時にはスプーンが空になっていた。

 

「それ魔法じゃないし!」と言いながら笑っていたCちゃんとDちゃん。

「魔法じゃないけど、美味しいよ」と、2人に声をかけてくれたEくん。

 

その後、CちゃんとDちゃんが自分たちからトマトをすくって食べてみようとはならなかったが、トマトを前にしてフリーズしていた最初の不安感のようなものはなくなっていた。

 

ここに来て姉 Cちゃんが「小さくすれば食べられるかも.....。」とポツリ。

「自分で小さく切れる?」と声かけ。お箸とフォークを使い、なかなか切れない皮の部分に苦戦しながらも切り進めていたCちゃん。

 

この時、私は妹のDちゃんもお姉ちゃんと一緒なら食べられるかもと思い、トマトを小さく切る仕事をCちゃんに任せ少しの間目を離していた。

 

しばらくして小さくできたー」と言うCちゃんに顔を向けてみると。

 

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そこにはトマトピューレがあった。彼女の中でこれなら食べられると思う大きさが私の想定していた以上のミクロサイズだったようで、流動食みたいになっていた。

 

やっちゃったなぁ.....という気持ちになった。姉 Cちゃんはピューレになったトマトをスプーンで混ぜてみたり、持ち上げてみたり、その姿を見ていた妹 Dちゃんも形状の変わったトマトに興味が移り「食べる時間」という雰囲気ではなくなってしまった。

 

妹 Dちゃんはお姉ちゃんの影響も受けてるかもしれないし、場所を変えて食べられる友達と一緒にしてみるのもいいかなーと、他のアイデアを巡らせている間に、

 

「Cちゃんたちが食べてるの先生見たことあるよ。食べれるでしょ?」と、去年妹Dちゃんの担任だったという先生がやってきた。

 

「ほら、がんばれー。食べれるよー」

と、2人の横に座りその先生が一言声を掛けると、きちんと座り直し2人とも食べ始めた。表情は曇り気味だったが結局、トマトも他のメニューもすべて食べ終わり、その後何事もなかったように遊び始めた。嬉しそうに食べられた報告もしてくれた。

 

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これもひとつOKな結末なのだろうな(か?)、いろいろ考えを巡らせて辿り着いた終着点はここかぁという気持ちが隠せなかった。

 

5月から一緒に子どもたちと過ごし始めて、私と子どもたちの間に信頼関係がまだ十分にあったわけではないことは重々承知の上、でもなんだかモヤモヤ。

 

子どもたちがどう考えて、苦手と言っていたトマトを食べ始めたのか、私(この先生)なら食べなくてもきいかもという気持ちもあっただろうし、納得していたのか分からないが全部ひっくるめて次に繋げたいと思うお昼ごはんだった。今回のような場面に出会うのは初めてではないし、経験するたびに、苦手な食べ物についてはその場で食べられるか食べられないかの問題と捉えてはいけないなと思う。

 

そう思う一方、様々な食材を試して食べることを楽しめるようになってほしいという願い、一口食べることができたらトマトの印象が変わるきっかけになるかもという期待も捨て切れずにいる。でも、そこまでして食べなくちゃいけないのかという疑問もあるのが正直なところ。

 

よく言われるように正解はないが、今回の場合は、今日食べられなかったね。で後日、食べ始める前の環境設定から作り直してみる方法もあったのではないかと考える。

 

もしくは、トマトはこれから夏野菜としてよく目にする食材だから保育活動に盛り込んで長い目で見るのもあり。

 

こういう場面は何度立ち会っても試行錯誤が止まらない。

 

SNSで知り合った保育士さんが薦めていた「徹底して子どもの側に立つ保育」という書籍の実践例に同じような場面があったなと思い返し、読み返してみることにした。

 

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