とことこ保育

人生で間違いなく大切な乳幼児期

Art (表現)の捉え方。

f:id:mekabu6256:20210101115003j:image

ひとつ前の記事でカナダのカレッジで幼児教育を学んで感じた点 「授業展開の仕方」 「実習ノートの主観性と客観性」について書き留めましたが、今回は残りのひとつ 「Art (表現)の捉え方」について追記したいと思います。

hoikutogether.hatenablog.com

 

-----------------------------------------

幼児教育の分野で「表現」と聞くと保育所保育指針の内容から、感じたこと・考えたことを自分なりに表現する、様々な素材・感覚・音・リズムを楽しむと、私も国家試験を受験した時からそのような認識でいました。

 

こちらで幼児教育を学びなおして感じたArt (表現)の役割は、プラスして言葉以外の自己表現の方法を保障る、言語を通したコミュニケーションが成立しない又自分の思いをアウトプットし切れない場合の昇華としての役割も強いように感じました。

 

 

 トロントの人口の約半数近く(約47%)は他国出身と言われており、園で主要となっている言語と家庭で話されている言語が異なる、或いは子どもたちの第一言語ではないことが多く、そのため言語を介したコミュニケーションが子どもたちの要求や思いを相手に伝えるのに不十分である場合があります。そのため言語以外の自己表現としてのartの位置付けがより強いように感じました。

f:id:mekabu6256:20201231012711j:plain


実際に授業内で見たビデオでは、英語で相手に伝えたい事を説明できない4歳児が、保育者をホワイトボードの前に連れて行き、絵を描くことを通して何について話しているのかをビジュアルで伝えていました。ビデオを見る限り、おそらく彼女は聞くと英単語の意味は分かるけど、自分の言葉としてまだ使えない段階のようで保育者が、「Is that a car?」と尋ねると、首を縦に振ってそうだと言わんばかりの反応見せていました。子どもたち自身が、絵を描くという行為が遊びだけでなく他者への伝達の役割があることを感じているから上記のような行動になったのかなと推測すると、生活の中で言語以外の意思疎通の方法があることを子どもたちが気づけるような環境設定又はサポートする態勢になっているのではと感じました。

 

それは 絵の具やチョークを使った遊びを大胆に行えるスペースが部屋の中に常時設置されていたり、様々な感情や日常の場面を表すポスターや写真が壁に貼ってあるという物的環境からのアプローチであったり、子どもの問いかけに対して言葉+ジェスチャーで返す、保育者も言葉を介したコミュニケーションと同時に絵を描くなど他の表現方法を併用し遊びの中でモデルとなってみる、また保護者から聞いて子どもが理解できる単語や興味のある物事から言葉かけのきっかけを見つける、保育者の関わりからのアプローチではないかと思います。他のビデオの中でもこういった場面を目にすることがあり、言語の発達や母語に違いがある中で子どもたちと過ごすことへの配慮については次セメスターに引き続き学ぶことがたくさんありそうです。

 

また、Artは子どもたちの気持ちや考えが伝わらない場面から来る葛藤やフラストレーションを解消する昇華方法のひとつであるようにも感じました。昇華とはストレスや不安の軽減方法である防衛機制のひとつで、抑えられた欲求をスポーツや芸術に向けることを指します。

f:id:mekabu6256:20210101025421j:plainhttps://kichita.com/2019/02/22/bouei/

 

一見楽しんでいる・遊んでいるように見える子どもたちの行動も、その裏には煮え切らない気持ちがあり、自分の心の動きと折り合いをつけようとする無意識の動きがあると考えると表現としてのArtの役割が言葉の伝わらない環境下でどれだけ大切であるか垣間見れる気がします。

 

ここで感じた面白さは保育所保育指針5領域の中の『言葉』にもあり、改めて読んでみると、言葉を介した意思疎通が成り立つ前提で構成されている部分が多いのではないかという視点が生まれました。

 

指針内容のねらいを見てみると、信頼関係を基盤として、指し示す対象と言葉との対応に気付き理解するという点、この人に伝えたい、思いを分かって欲しいと言う思いが言葉の力を養っている、と他者との繋がりの上に言語発達がある考え方等は似ているなと思う一方で、なぜ「言葉」と「表現」に領域が分かれているのか等いろいろな疑問が浮かびます。まだまだ頭の中がごちゃごちゃ....。

 

今回の1セメスターのまとめで言いたいことは、こっちの考えが良い悪いという話ではなく、それぞれの国の成り立ちや国民の民族構成等によって子どもの育ちに対して考える視点やアプローチが違うことは本当に面白いなと感じた点かなと思います。

 

日本の保育学科にあたる私のプログラムですが、学びの対象年齢は0~12歳であるため2セメスターからは初めて小学生にあたる年齢の子どもの育ちと発達について学びます。この学びは幼保小の連携みたいなところにも繋がるのかなぁーと考えると今からワクワク!ひとまず英語をどうにかしないとなという気持ちに追い立てられています。